突発やプレイ日記を書き逃げする雑記帳。
未完結品多し。
ネタバレ満載警報発令中~。
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幸せ四兄弟パラレル。
中編。
「んじゃ、これで公式の会談は終了だな」
「そうですね」
背後を全て嵌め殺しの特殊ガラスで覆い、水道橋の見事な大瀑布に抱かれた、マルクト帝国謁見の間。
玉座にゆったりと腰掛けて客人を見下ろしているのは、淡い金の髪に浅黒い肌、くだけた態度と衣装の合間に威厳が垣間見える男――マルクト帝国現皇帝ピオニー九世。
正面に立ち彼を見上げているのは、翠の髪に白を基調とした導師服を纏った穏やかな印象の少年――ローレライ教団最高指導者、導師イオン。
ピオニーは面倒事は終わったとばかり晴れやかな笑みを浮かべると、イオンへと身を乗り出した。
「さ、堅っ苦しいのも飽きちまったし。折角グランコクマまで来たんだ、ウチの可愛いヤツらでも愛でて行けよ。なーんも無いところだが、メシくらいは出すぜ」
「ゆ、夕飯っ! 王侯貴族の晩餐会……凄っ!! ぃ、イオン様、陛下自らのお誘いを無下に断るのも失礼ですしぃ、折角ですから――」
「ご厚意は有り難いのですが、あいにく今日は体調が思わしくないのです。早くに休ませて頂いても構いませんか?」
隣に控えるアニスの興奮した声を遮り、イオンはピオニーを上目遣いに見上げてみせた。
「そっか、それじゃしょうがねーな。じゃ、明日の朝飯には俺の部屋に来いよ。うちの可愛いヤツらと一緒の朝飯と洒落込もうぜ」
ピオニーはイオンの断りを深く追求することなく、洒落っ気めいてウインクしてみせた。
イオンは微かな微笑を返すと、ちらりと辺りを見回した。
「ところで今日は死霊使い殿がご不在のようですが、何処か具合でも?」
「まっさか、憎たらしい程ピンピンしてるぜ。今日はテオルの森の警備を強化するとか言って出て行っちまったんだが、道中会わなかったか?」
豪奢な玉座の肘掛けに片頬杖付き、おっかしいなぁとでも言いたげに首を捻るピオニー。
その言葉にひくりと口元を引きつらせたものの、イオンは即座に淡い微笑を取り繕い言葉を継いだ。
「それではきっとすれ違いになってしまったのですね。少々聞きたい事があったのですが、仕方ありません。それでは陛下、また明朝お会い致しましょう」
イオンは優雅な所作で礼をすると、ぐずるアニスと他の守護役達を引き連れて謁見の間を後にした。
「なあじーさん。今日のイオン、ちと口数が少なくなかったか?」
「ですなぁ。余程体調がお悪かったのやも知れませぬ」
「明日はアイツの好きな料理でも並べてやるか」
「それが宜しいでしょう」
ピオニーはうーんと大きく伸びをすると玉座から立ち上がり、颯爽とした足取りで愛するモノの待つ自室へと引き上げた。
グランコクマ、大通り。
数名の導師守護役に囲まれて、帝国指定の宿へと引き上げる道すがら。
導師イオンとアニスの二人組は、通行人に聞こえない小声で忙しなく囁き交わしていた。
「ま、大方そんなところだろうと思ってたけど。ヤツの入れ知恵でもなきゃ、アイツがこんな大それた事やるハズ無いよね」
「あ~あ、イオン様ったら大佐にどんな御接待受けてんだろ~。も~お、アニスちゃんも誘ってくれれば良かったのにぃ」
腕を組んでプリプリ怒るアニスに、氷の矢のような視線を向ける“導師イオン”。
おおっぴらに不遜な態度を取るわけにはいかないためか、視線だけは冷ややかに、微かに肩を竦めてみせた。
「アンタ、さっきからそればっかりだよね。恥ずかしくないわけ?」
「うっさいなぁ。アンタだって、イオン様スマイルちゃんとやんなさいよね~。バレたらどうするつもりなのさぁ」
「ボクはアンタと違っていくらでも言い訳出来るし、全く構わないね」
アニスの反論を鼻で笑う。
不機嫌な視線を遠目に見えてきた宿へ向け、手にした杖の先をさらりと撫でた。
「アンタこそ、アイツの動向くらい気付きなよ。それで側近が務まるなんて、大した職場だよね」
「そういうこと言うかなぁ。第一アンタの――」
「モースの部下、だろ。ボクは関係ないね」
「ぅ……あ、アンタの弟じゃんっ」
「…………。だから、こうしてフォローしてやってんじゃないか」
低く押し殺した声と共に、“導師イオン”の手元で杖の柄がミシリと啼いた。
緊急措置。
それはもしもの場合――過激派や教団を敵視するモノの動向が確認された場合など――に、外見、声共にそっくりで尚かつ武力に秀でたシンクが影武者を務めるというものである。
確かに過去数回、そうやって外出の多い下の導師を守ってきた。
しかし、迷子の身代わりなどというのは正真正銘今回が初めての事だった。
「テオルの森に使いも出したし、さっさと着替えて捜しに行くよ」
目的地を前に足を早めた導師……もといシンクを見上げ、アニスは不満げな声を上げた。
「えー? 似合ってるのにぃ」
「似合ってなんかない」
「まあね~。喋り方とか態度とか、うちのイオン様よりか上様の方に似てるけどね~」
何気ないアニスの言葉にビクリと肩を振るわせるシンク。
ギッとアニスを睨み付けると導師守護役の輪をかき分けて宿屋へと駆け出した。
「あ、お手伝いを……」
「要らないよっ!!」
導師守護役の言葉を遮り宿の扉へ姿を消したシンクを見送り。
「「「「もったいない……」」」」
結局着替えを手伝わせて貰えなかった女達は、落胆の面持ちで互いに顔を見合わせた。
中編。
「んじゃ、これで公式の会談は終了だな」
「そうですね」
背後を全て嵌め殺しの特殊ガラスで覆い、水道橋の見事な大瀑布に抱かれた、マルクト帝国謁見の間。
玉座にゆったりと腰掛けて客人を見下ろしているのは、淡い金の髪に浅黒い肌、くだけた態度と衣装の合間に威厳が垣間見える男――マルクト帝国現皇帝ピオニー九世。
正面に立ち彼を見上げているのは、翠の髪に白を基調とした導師服を纏った穏やかな印象の少年――ローレライ教団最高指導者、導師イオン。
ピオニーは面倒事は終わったとばかり晴れやかな笑みを浮かべると、イオンへと身を乗り出した。
「さ、堅っ苦しいのも飽きちまったし。折角グランコクマまで来たんだ、ウチの可愛いヤツらでも愛でて行けよ。なーんも無いところだが、メシくらいは出すぜ」
「ゆ、夕飯っ! 王侯貴族の晩餐会……凄っ!! ぃ、イオン様、陛下自らのお誘いを無下に断るのも失礼ですしぃ、折角ですから――」
「ご厚意は有り難いのですが、あいにく今日は体調が思わしくないのです。早くに休ませて頂いても構いませんか?」
隣に控えるアニスの興奮した声を遮り、イオンはピオニーを上目遣いに見上げてみせた。
「そっか、それじゃしょうがねーな。じゃ、明日の朝飯には俺の部屋に来いよ。うちの可愛いヤツらと一緒の朝飯と洒落込もうぜ」
ピオニーはイオンの断りを深く追求することなく、洒落っ気めいてウインクしてみせた。
イオンは微かな微笑を返すと、ちらりと辺りを見回した。
「ところで今日は死霊使い殿がご不在のようですが、何処か具合でも?」
「まっさか、憎たらしい程ピンピンしてるぜ。今日はテオルの森の警備を強化するとか言って出て行っちまったんだが、道中会わなかったか?」
豪奢な玉座の肘掛けに片頬杖付き、おっかしいなぁとでも言いたげに首を捻るピオニー。
その言葉にひくりと口元を引きつらせたものの、イオンは即座に淡い微笑を取り繕い言葉を継いだ。
「それではきっとすれ違いになってしまったのですね。少々聞きたい事があったのですが、仕方ありません。それでは陛下、また明朝お会い致しましょう」
イオンは優雅な所作で礼をすると、ぐずるアニスと他の守護役達を引き連れて謁見の間を後にした。
「なあじーさん。今日のイオン、ちと口数が少なくなかったか?」
「ですなぁ。余程体調がお悪かったのやも知れませぬ」
「明日はアイツの好きな料理でも並べてやるか」
「それが宜しいでしょう」
ピオニーはうーんと大きく伸びをすると玉座から立ち上がり、颯爽とした足取りで愛するモノの待つ自室へと引き上げた。
グランコクマ、大通り。
数名の導師守護役に囲まれて、帝国指定の宿へと引き上げる道すがら。
導師イオンとアニスの二人組は、通行人に聞こえない小声で忙しなく囁き交わしていた。
「ま、大方そんなところだろうと思ってたけど。ヤツの入れ知恵でもなきゃ、アイツがこんな大それた事やるハズ無いよね」
「あ~あ、イオン様ったら大佐にどんな御接待受けてんだろ~。も~お、アニスちゃんも誘ってくれれば良かったのにぃ」
腕を組んでプリプリ怒るアニスに、氷の矢のような視線を向ける“導師イオン”。
おおっぴらに不遜な態度を取るわけにはいかないためか、視線だけは冷ややかに、微かに肩を竦めてみせた。
「アンタ、さっきからそればっかりだよね。恥ずかしくないわけ?」
「うっさいなぁ。アンタだって、イオン様スマイルちゃんとやんなさいよね~。バレたらどうするつもりなのさぁ」
「ボクはアンタと違っていくらでも言い訳出来るし、全く構わないね」
アニスの反論を鼻で笑う。
不機嫌な視線を遠目に見えてきた宿へ向け、手にした杖の先をさらりと撫でた。
「アンタこそ、アイツの動向くらい気付きなよ。それで側近が務まるなんて、大した職場だよね」
「そういうこと言うかなぁ。第一アンタの――」
「モースの部下、だろ。ボクは関係ないね」
「ぅ……あ、アンタの弟じゃんっ」
「…………。だから、こうしてフォローしてやってんじゃないか」
低く押し殺した声と共に、“導師イオン”の手元で杖の柄がミシリと啼いた。
緊急措置。
それはもしもの場合――過激派や教団を敵視するモノの動向が確認された場合など――に、外見、声共にそっくりで尚かつ武力に秀でたシンクが影武者を務めるというものである。
確かに過去数回、そうやって外出の多い下の導師を守ってきた。
しかし、迷子の身代わりなどというのは正真正銘今回が初めての事だった。
「テオルの森に使いも出したし、さっさと着替えて捜しに行くよ」
目的地を前に足を早めた導師……もといシンクを見上げ、アニスは不満げな声を上げた。
「えー? 似合ってるのにぃ」
「似合ってなんかない」
「まあね~。喋り方とか態度とか、うちのイオン様よりか上様の方に似てるけどね~」
何気ないアニスの言葉にビクリと肩を振るわせるシンク。
ギッとアニスを睨み付けると導師守護役の輪をかき分けて宿屋へと駆け出した。
「あ、お手伝いを……」
「要らないよっ!!」
導師守護役の言葉を遮り宿の扉へ姿を消したシンクを見送り。
「「「「もったいない……」」」」
結局着替えを手伝わせて貰えなかった女達は、落胆の面持ちで互いに顔を見合わせた。
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