突発やプレイ日記を書き逃げする雑記帳。
未完結品多し。
ネタバレ満載警報発令中~。
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「凍夜っていつも楽しそうだよな」
何気ない会話の中に、時折顔を出す言葉。
それはとても当たり前のことで、その都度当たり前の返答を返していた。
否定も肯定もせず、曖昧に。かつ、この話題が先へ続かないように。
しかし。
「……そう、見える?」
高一も残り一週間を切ったその日。
彼は薄い笑みを浮かべて顔を上げた。
おそらく予想外だったのだろう返答に、きょとんと見返すクラスメイト。
その表情に、凍夜はほんの少し口の端を持ち上げた。
「だって……いっつもニコニコしてんじゃん、お前」
「別に、楽しい時だけ笑ってる訳じゃないよ?」
「え……」
戸惑い、少しばかり表情を硬くしたクラスメイトの様子を、凍夜はやけに冷めた感覚で興味深く見つめていた。
関係を繕う必要性が無くなった故か、繕うことさえ面倒になったのか。
彼自身、自分の動機を測りかねていた。
「だってさ、ムッツリしてるヤツより、にこにこしてるヤツの方が楽だろ? 一緒に居るの」
そう言ってにこにこと笑む。
いつものように。
「人間関係の雲行きとかさ、図るのめんどくさいから。だから適当に誤魔化してたんだけど。分からないものだよね、案外」
口を閉ざしたクラスメイトに言うだけ言って席を立つ。
昼休みの次は移動教室だ。のんびり行きたいなら予鈴少し前に教室を出ないといけない、別棟の端の。
薄い教科書一冊片手に席を離れた彼の背に、遠慮がちな声が掛かった。
「なあ……なんで、今更言うんだ?」
「さあ」
振り向いた先には、すがるような目をしたクラスメイトが立っていた。
それは凍夜にしては予想外で、瞬間口元の笑みが失せた。
瞬き程の間でしかなかったが。
「来学期から転校するんだ。そのせいかな。たいした意味は無いと思うけど」
「っんで、もっと早く言ってくれれば……」
何処か痛みを伴う彼の声に、凍夜は柔らかな笑みを浮かべ、踵を返した。
(そうかな……)
薄い教科書を小脇に抱え、廊下を一人、ひなたぼっこしながらのんびり歩く。
窓越しにまだ枝ばかりを晒している桜並木を見下ろし、口にしなかった言葉を考えていた。
(カミングアウトしたって、何も変わらなかったと思うけど。……ここでは)
凍夜自身、自分を変える気など無かったのだから。
(でも……)
立ち止まり、真昼の空を見上げる。
まだ肌寒い春の空は一面、すっきりと優しげな青色に彩られている。
(月が、昇る気がする)
何も変わらなかった日常に、変化が起こるような気がする。
月が満ち欠けするように。
校舎内に木霊する予鈴に操られるように、一番端の特別教室へ向けて歩き出す。
彼の視界の端を、春の空と同じ色した蝶が過ぎったような気が……した。
何気ない会話の中に、時折顔を出す言葉。
それはとても当たり前のことで、その都度当たり前の返答を返していた。
否定も肯定もせず、曖昧に。かつ、この話題が先へ続かないように。
しかし。
「……そう、見える?」
高一も残り一週間を切ったその日。
彼は薄い笑みを浮かべて顔を上げた。
おそらく予想外だったのだろう返答に、きょとんと見返すクラスメイト。
その表情に、凍夜はほんの少し口の端を持ち上げた。
「だって……いっつもニコニコしてんじゃん、お前」
「別に、楽しい時だけ笑ってる訳じゃないよ?」
「え……」
戸惑い、少しばかり表情を硬くしたクラスメイトの様子を、凍夜はやけに冷めた感覚で興味深く見つめていた。
関係を繕う必要性が無くなった故か、繕うことさえ面倒になったのか。
彼自身、自分の動機を測りかねていた。
「だってさ、ムッツリしてるヤツより、にこにこしてるヤツの方が楽だろ? 一緒に居るの」
そう言ってにこにこと笑む。
いつものように。
「人間関係の雲行きとかさ、図るのめんどくさいから。だから適当に誤魔化してたんだけど。分からないものだよね、案外」
口を閉ざしたクラスメイトに言うだけ言って席を立つ。
昼休みの次は移動教室だ。のんびり行きたいなら予鈴少し前に教室を出ないといけない、別棟の端の。
薄い教科書一冊片手に席を離れた彼の背に、遠慮がちな声が掛かった。
「なあ……なんで、今更言うんだ?」
「さあ」
振り向いた先には、すがるような目をしたクラスメイトが立っていた。
それは凍夜にしては予想外で、瞬間口元の笑みが失せた。
瞬き程の間でしかなかったが。
「来学期から転校するんだ。そのせいかな。たいした意味は無いと思うけど」
「っんで、もっと早く言ってくれれば……」
何処か痛みを伴う彼の声に、凍夜は柔らかな笑みを浮かべ、踵を返した。
(そうかな……)
薄い教科書を小脇に抱え、廊下を一人、ひなたぼっこしながらのんびり歩く。
窓越しにまだ枝ばかりを晒している桜並木を見下ろし、口にしなかった言葉を考えていた。
(カミングアウトしたって、何も変わらなかったと思うけど。……ここでは)
凍夜自身、自分を変える気など無かったのだから。
(でも……)
立ち止まり、真昼の空を見上げる。
まだ肌寒い春の空は一面、すっきりと優しげな青色に彩られている。
(月が、昇る気がする)
何も変わらなかった日常に、変化が起こるような気がする。
月が満ち欠けするように。
校舎内に木霊する予鈴に操られるように、一番端の特別教室へ向けて歩き出す。
彼の視界の端を、春の空と同じ色した蝶が過ぎったような気が……した。
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