突発やプレイ日記を書き逃げする雑記帳。
未完結品多し。
ネタバレ満載警報発令中~。
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ネタバレ祭り。
シリアス。
順チド
伊織の新ペルソナ覚醒イベントを知らない方は、今のうちに回れ右。
「あの、オレ……伊織なんすけど。今、いっすか?」
十一月も終わろうかという、少しばかり冷え込む夜更け。
自室で申し訳程度参考書に目を通していた美鶴は、名乗った本人にしてはあまりにも控えめなノックに僅かな胸騒ぎを覚えながら扉へ向かった。
扉前には、ひどく神妙な顔をした伊織。
ラウンジでスケッチブックを渡した後も彼女を思い出していたのだろう、目元が赤く腫れていた。
美鶴は、そのことには触れず平静を装って口火を切った。
「どうした? 伊織。時間も時間だし、込み入った話なら作戦室にでも……」
「いえ、ここでいっす。……すぐ、終わるんで」
伊織は掠れた声で告げると、腰のガンベルトから召喚器を引き抜いた。
「これ、お返しします」
ああ、胸騒ぎの原因はこれだったのか。
美鶴は鈍色に光る銃身を見つめながら、酷く冷静に状況を分析していた。
ラウンジでは確かにタルタロス攻略に参加すると告げてはいたが、それも場の勢いに流されての事だったのかも知れない。
首謀者は倒れ、標的とするべきモノは既に無く、愛しい人も失ってしまった彼が、この先命を賭ける理由など無いではないか。
元々明彦がスカウトしてきた人材であって、寮生ですら無かったのだから。
自分を納得させるべく思考を巡らせながら、硝子一枚隔てたような現実に手を伸ばす。
女性の手には大きめな金属の塊は、残酷な現実を体現したかの如く冴え冴えとした冷気を放っていた。
「オレ専用にってもらったのに、スンマセン」
自分の手に渡ったそれを見下ろしていた美鶴は、小さいながらもしっかりとした声音に顔を上げた。
先に続く言葉を、きちんと自分が聞かなければ。自分が部長なのだから。
内心の想いを顔に出さないように努める美鶴の前で、しかし伊織は腰の後ろへ手を回し、もう一方の手で帽子の鍔を引き下げた。
「オレは……これを使いたいんで」
言葉と共に差し出された手には、美鶴の手にあるものより少々小振りな銃器。
おそらく女性用に造られた……召喚器。
「あの晩、拾ってたんス。アイツ、すっげーコイツに執着してたから」
自分に言い聞かせるように呟いて、召喚器を握り込む。
磨き込まれた銀色の銃身は、伊織の大きな掌に飲まれるように見えなくなった。
「アイツ、最期まで握りしめたままだったんスよ。オレが、手に触れるまで……」
視線を感じて顔を上げれば、帽子の下に覗く真剣な瞳が美鶴を映し込んでいた。
「オレ、アイツと……チドリと一緒に戦いたいんです」
飾り気のない真っ直ぐな言葉。
揺るぎない決意を秘めた宣言。
伊織順平という男は、こんな表情をする人間だっただろうか。
美鶴が初対面から抱いていた印象は、お調子者で子供っぽい、責任感の薄さが垣間見える少年だった。
少なくとも、夏休みが終わるまでは。
彼をここまで変えたのは、たった数ヶ月を共に過ごしたチドリという少女の存在だったのだろう。
ならば、これほどの想いを寄せられたチドリは、今際の際でさえ幸せだったに違いない。
それこそ、“死”が恐ろしくなるほどに。
他人の目には、彼等は不幸に映るのかも知れない。
しかし、これも一つの幸福のカタチなのではないか……、美鶴にはそう思えた。
チドリを変えた伊織。
伊織を変えたチドリ。
彼等は今も、絶望の底にわだかまる幸福の中にある。
かけがえのない絆が、そこにある。
「お前の覚悟は見せて貰ったが、これは受け取れないな」
美鶴は緩く息を吐き出すと、召喚器を持ち主の手へと戻した。
伊織の掌の上で、伊織とチドリの召喚器が互いの光を反射しあい、伊織の瞳に小さな星を散らしている。
「チドリに、手向けてやるといい。……一緒に、戦うのだろう?」
黒い瞳の中にゆらゆらとたゆたう星を見つめながら、美鶴は口の端を僅かに上げた。
「……うぃっす」
美鶴の微笑を間近に臨み思わず頬を紅潮させた伊織は、自分の召喚器を仕舞う動作に合わせて視線を逸らした。
召喚器をベルトに戻し、チドリの召喚器を見つめ。
次に顔を上げた時には、伊織の口元にはいつもと変わらぬ笑みが浮かんでいた。
「センパイ。オレ、明日っからガンッガン戦いますから。だから、ぜってー誘って下さいよ。タルタロス制覇だって、ストレガ処刑だって、オレどこまでも付き合いますから」
「ああ、期待しているよ」
お決まりの挨拶を最後に階下へと引き上げる伊織の背中を見つめ、美鶴は目標も終点も知れない“明日”へと思いを馳せた。
天田が、明彦が、伊織が前へと進むように、自分も顔を上げて前へ進もう。
例え、その先に光が見えなくとも……。
伊織は自室のベッドに腰を降ろし、銀色に輝くチドリの召喚器を見つめていた。
「チドリ……。オレ、ガンバルからな」
殆ど声にならない声で、銀色に囁きかける。
両手で不器用に包み込み、人肌に温もった金属の感触に瞳を閉じた。
「一人じゃ全然ダメだけど、すぐ弱音吐いちまうけど。お前にもらった命、無駄にしねぇ」
――うん、順平。
わたしは、何時でも順平の傍に居るから。
「シャドウなんか、オレが全部ツブしてやる。だからさ、オレと一緒に……」
銃身の上に温かな雫がポタリと落ちた。
慌てて袖口で拭き取る傍からポタリポタリと、次第に雫の量が多くなる。
「チドリ……」
彼は“彼女”を、宝物を扱うように、その胸に押し抱いた。
――アナタがわたしを抱きしめる。
アナタは、わたしの世界。
「チドリ……」
――わたしはアナタの剣。
アナタはわたしの世界。
アナタがそこにいる限り、わたしとアナタはずっと一緒。
ね? 順平……――
シリアス。
順チド
伊織の新ペルソナ覚醒イベントを知らない方は、今のうちに回れ右。
「あの、オレ……伊織なんすけど。今、いっすか?」
十一月も終わろうかという、少しばかり冷え込む夜更け。
自室で申し訳程度参考書に目を通していた美鶴は、名乗った本人にしてはあまりにも控えめなノックに僅かな胸騒ぎを覚えながら扉へ向かった。
扉前には、ひどく神妙な顔をした伊織。
ラウンジでスケッチブックを渡した後も彼女を思い出していたのだろう、目元が赤く腫れていた。
美鶴は、そのことには触れず平静を装って口火を切った。
「どうした? 伊織。時間も時間だし、込み入った話なら作戦室にでも……」
「いえ、ここでいっす。……すぐ、終わるんで」
伊織は掠れた声で告げると、腰のガンベルトから召喚器を引き抜いた。
「これ、お返しします」
ああ、胸騒ぎの原因はこれだったのか。
美鶴は鈍色に光る銃身を見つめながら、酷く冷静に状況を分析していた。
ラウンジでは確かにタルタロス攻略に参加すると告げてはいたが、それも場の勢いに流されての事だったのかも知れない。
首謀者は倒れ、標的とするべきモノは既に無く、愛しい人も失ってしまった彼が、この先命を賭ける理由など無いではないか。
元々明彦がスカウトしてきた人材であって、寮生ですら無かったのだから。
自分を納得させるべく思考を巡らせながら、硝子一枚隔てたような現実に手を伸ばす。
女性の手には大きめな金属の塊は、残酷な現実を体現したかの如く冴え冴えとした冷気を放っていた。
「オレ専用にってもらったのに、スンマセン」
自分の手に渡ったそれを見下ろしていた美鶴は、小さいながらもしっかりとした声音に顔を上げた。
先に続く言葉を、きちんと自分が聞かなければ。自分が部長なのだから。
内心の想いを顔に出さないように努める美鶴の前で、しかし伊織は腰の後ろへ手を回し、もう一方の手で帽子の鍔を引き下げた。
「オレは……これを使いたいんで」
言葉と共に差し出された手には、美鶴の手にあるものより少々小振りな銃器。
おそらく女性用に造られた……召喚器。
「あの晩、拾ってたんス。アイツ、すっげーコイツに執着してたから」
自分に言い聞かせるように呟いて、召喚器を握り込む。
磨き込まれた銀色の銃身は、伊織の大きな掌に飲まれるように見えなくなった。
「アイツ、最期まで握りしめたままだったんスよ。オレが、手に触れるまで……」
視線を感じて顔を上げれば、帽子の下に覗く真剣な瞳が美鶴を映し込んでいた。
「オレ、アイツと……チドリと一緒に戦いたいんです」
飾り気のない真っ直ぐな言葉。
揺るぎない決意を秘めた宣言。
伊織順平という男は、こんな表情をする人間だっただろうか。
美鶴が初対面から抱いていた印象は、お調子者で子供っぽい、責任感の薄さが垣間見える少年だった。
少なくとも、夏休みが終わるまでは。
彼をここまで変えたのは、たった数ヶ月を共に過ごしたチドリという少女の存在だったのだろう。
ならば、これほどの想いを寄せられたチドリは、今際の際でさえ幸せだったに違いない。
それこそ、“死”が恐ろしくなるほどに。
他人の目には、彼等は不幸に映るのかも知れない。
しかし、これも一つの幸福のカタチなのではないか……、美鶴にはそう思えた。
チドリを変えた伊織。
伊織を変えたチドリ。
彼等は今も、絶望の底にわだかまる幸福の中にある。
かけがえのない絆が、そこにある。
「お前の覚悟は見せて貰ったが、これは受け取れないな」
美鶴は緩く息を吐き出すと、召喚器を持ち主の手へと戻した。
伊織の掌の上で、伊織とチドリの召喚器が互いの光を反射しあい、伊織の瞳に小さな星を散らしている。
「チドリに、手向けてやるといい。……一緒に、戦うのだろう?」
黒い瞳の中にゆらゆらとたゆたう星を見つめながら、美鶴は口の端を僅かに上げた。
「……うぃっす」
美鶴の微笑を間近に臨み思わず頬を紅潮させた伊織は、自分の召喚器を仕舞う動作に合わせて視線を逸らした。
召喚器をベルトに戻し、チドリの召喚器を見つめ。
次に顔を上げた時には、伊織の口元にはいつもと変わらぬ笑みが浮かんでいた。
「センパイ。オレ、明日っからガンッガン戦いますから。だから、ぜってー誘って下さいよ。タルタロス制覇だって、ストレガ処刑だって、オレどこまでも付き合いますから」
「ああ、期待しているよ」
お決まりの挨拶を最後に階下へと引き上げる伊織の背中を見つめ、美鶴は目標も終点も知れない“明日”へと思いを馳せた。
天田が、明彦が、伊織が前へと進むように、自分も顔を上げて前へ進もう。
例え、その先に光が見えなくとも……。
伊織は自室のベッドに腰を降ろし、銀色に輝くチドリの召喚器を見つめていた。
「チドリ……。オレ、ガンバルからな」
殆ど声にならない声で、銀色に囁きかける。
両手で不器用に包み込み、人肌に温もった金属の感触に瞳を閉じた。
「一人じゃ全然ダメだけど、すぐ弱音吐いちまうけど。お前にもらった命、無駄にしねぇ」
――うん、順平。
わたしは、何時でも順平の傍に居るから。
「シャドウなんか、オレが全部ツブしてやる。だからさ、オレと一緒に……」
銃身の上に温かな雫がポタリと落ちた。
慌てて袖口で拭き取る傍からポタリポタリと、次第に雫の量が多くなる。
「チドリ……」
彼は“彼女”を、宝物を扱うように、その胸に押し抱いた。
――アナタがわたしを抱きしめる。
アナタは、わたしの世界。
「チドリ……」
――わたしはアナタの剣。
アナタはわたしの世界。
アナタがそこにいる限り、わたしとアナタはずっと一緒。
ね? 順平……――
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