突発やプレイ日記を書き逃げする雑記帳。
未完結品多し。
ネタバレ満載警報発令中~。
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順番間違えましたが、満月の前。
初めてのベルベットルーム。
青。
等間隔に光が射し込む不可思議な空間は、青で満たされていた。
奥の壁一枚を鳥籠の如く廻らせた精緻且つ複雑な骨組みに硝子をはめ込み展望窓としたこの部屋は、どうやら何処へともなく上昇し続けるエレベーターであるらしい。
この部屋唯一の光源でもある光は、その窓から一定の間隔で射し込んでくる。
「人を迎えるなど、何年ぶりでしょうな」
自室で眠っていたはずの凍夜は、気付けば青い部屋の巨大な硝子窓に向かう位置の椅子に腰掛けていた。
丸テーブルを挟んで凍夜の向かいに座るのは、厳つい眉に奇妙な――童話に登場するピノキオのような、という表現が最も的確だろうかと思われる――鼻の老紳士。
その隣には、部屋と同じ青に統一した装いの、色素の薄い髪を肩上で切り揃えたショートボブの女性。
先刻声を発したのは、イゴールと名乗る老紳士の方だった。
イゴールは、状況を掴めない凍夜の内心などお構いなしに先を続ける。
「ここは何かの形で“契約”を果たされた方のみが訪れる部屋。今から貴方は、この“ベルベットルーム”のお客人だ」
とうとうと喋り続けるイゴールの隣に立つ女性――エリザベスは、金の瞳に微かな好奇心を滲ませて凍夜を真っ直ぐに見つめている。
「貴方は“力”を磨くべき運命にあり、必ずや私の手助けが必要となるでしょう。貴方が支払うべき代価は一つ……。“契約”に従い、ご自身の選択に相応の責任を持って頂く事です」
話し続けるイゴールの手に、唐突に一冊の帳面が現れた。
それは凍夜自身にも見覚えのある帳面だった。
入寮日に謎の少年に促されるまま署名した、あの契約書だったのである。
契約書を開き中身へ視線を走らせたイゴールは、喉の奥でふぅむと唸った。
「これはまた、見事にインクが浸みてしまっておりますな。“契約”を果たしこの部屋を訪れるお客人は少ないが、契約書にインクを零すお客人はもっと少ない」
イゴールのギョロリとした目が凍夜を捕らえた瞬間、彼の手にあった契約書は姿を消し、中央の丸テーブルの上に現れた。
開かれたままの契約書は、確かに入寮初日の時のまま、凍夜夢人の“夜夢”の部分が潰れ読めなくなってしまっている。
イゴールはこれといって表情を険しくする事もなく、両手を組み口の端を微かに上げ、上目遣いに凍夜を見上げた。
「運命の輪を廻す定めにある貴方には“力”が必要であり、“力”をより効率的に行使するに私の技術は必要不可欠。そして、その技術を提供するには相応の代価が必要。……おわかり頂けますかな?」
「要するに、サインし直せって事かな」
「流石に飲み込みが早くていらっしゃる」
悪びれもせずサラリと言ってのけた凍夜に満足げに頷き返すと、イゴールは左に立つエリザベスへ顔を上げた。
「お客人へ、例の物を」
「畏まりました」
エリザベスは、まさにエレベーターガールの鑑のような微笑みを浮かべると、丸テーブルへと歩み寄った。
契約書の横手へふわりと手を翻らせると、その場に白色の小瓶と羽根ペンとが闇の中から滲むように現れた。
凍夜は白い小瓶を取り上げると、捩り式のキャップを開けてみた。
キャップに付いた細い棒に小さな筆が付いた、マニキュアの瓶のようなそれは、中に白い液体を湛え微かにシンナーの匂いを漂わせている。
「……修正液?」
「油性修正液、ミス○ンで御座います。それだけ広い範囲でも問題なく修正頂けるかと存じます」
テーブルの傍に立つエリザベスは、エレガスマイルを貼り付けたまま凍夜の手元を見下ろしている。
「さあ、どうぞ遠慮なさらず」
「履歴書とか、修正不可だったような気もするんだけど……ま、いいか」
そして、“契約”は無事に交わされたのであった。
運命の輪は、ここから廻る。
……多分。
初めてのベルベットルーム。
青。
等間隔に光が射し込む不可思議な空間は、青で満たされていた。
奥の壁一枚を鳥籠の如く廻らせた精緻且つ複雑な骨組みに硝子をはめ込み展望窓としたこの部屋は、どうやら何処へともなく上昇し続けるエレベーターであるらしい。
この部屋唯一の光源でもある光は、その窓から一定の間隔で射し込んでくる。
「人を迎えるなど、何年ぶりでしょうな」
自室で眠っていたはずの凍夜は、気付けば青い部屋の巨大な硝子窓に向かう位置の椅子に腰掛けていた。
丸テーブルを挟んで凍夜の向かいに座るのは、厳つい眉に奇妙な――童話に登場するピノキオのような、という表現が最も的確だろうかと思われる――鼻の老紳士。
その隣には、部屋と同じ青に統一した装いの、色素の薄い髪を肩上で切り揃えたショートボブの女性。
先刻声を発したのは、イゴールと名乗る老紳士の方だった。
イゴールは、状況を掴めない凍夜の内心などお構いなしに先を続ける。
「ここは何かの形で“契約”を果たされた方のみが訪れる部屋。今から貴方は、この“ベルベットルーム”のお客人だ」
とうとうと喋り続けるイゴールの隣に立つ女性――エリザベスは、金の瞳に微かな好奇心を滲ませて凍夜を真っ直ぐに見つめている。
「貴方は“力”を磨くべき運命にあり、必ずや私の手助けが必要となるでしょう。貴方が支払うべき代価は一つ……。“契約”に従い、ご自身の選択に相応の責任を持って頂く事です」
話し続けるイゴールの手に、唐突に一冊の帳面が現れた。
それは凍夜自身にも見覚えのある帳面だった。
入寮日に謎の少年に促されるまま署名した、あの契約書だったのである。
契約書を開き中身へ視線を走らせたイゴールは、喉の奥でふぅむと唸った。
「これはまた、見事にインクが浸みてしまっておりますな。“契約”を果たしこの部屋を訪れるお客人は少ないが、契約書にインクを零すお客人はもっと少ない」
イゴールのギョロリとした目が凍夜を捕らえた瞬間、彼の手にあった契約書は姿を消し、中央の丸テーブルの上に現れた。
開かれたままの契約書は、確かに入寮初日の時のまま、凍夜夢人の“夜夢”の部分が潰れ読めなくなってしまっている。
イゴールはこれといって表情を険しくする事もなく、両手を組み口の端を微かに上げ、上目遣いに凍夜を見上げた。
「運命の輪を廻す定めにある貴方には“力”が必要であり、“力”をより効率的に行使するに私の技術は必要不可欠。そして、その技術を提供するには相応の代価が必要。……おわかり頂けますかな?」
「要するに、サインし直せって事かな」
「流石に飲み込みが早くていらっしゃる」
悪びれもせずサラリと言ってのけた凍夜に満足げに頷き返すと、イゴールは左に立つエリザベスへ顔を上げた。
「お客人へ、例の物を」
「畏まりました」
エリザベスは、まさにエレベーターガールの鑑のような微笑みを浮かべると、丸テーブルへと歩み寄った。
契約書の横手へふわりと手を翻らせると、その場に白色の小瓶と羽根ペンとが闇の中から滲むように現れた。
凍夜は白い小瓶を取り上げると、捩り式のキャップを開けてみた。
キャップに付いた細い棒に小さな筆が付いた、マニキュアの瓶のようなそれは、中に白い液体を湛え微かにシンナーの匂いを漂わせている。
「……修正液?」
「油性修正液、ミス○ンで御座います。それだけ広い範囲でも問題なく修正頂けるかと存じます」
テーブルの傍に立つエリザベスは、エレガスマイルを貼り付けたまま凍夜の手元を見下ろしている。
「さあ、どうぞ遠慮なさらず」
「履歴書とか、修正不可だったような気もするんだけど……ま、いいか」
そして、“契約”は無事に交わされたのであった。
運命の輪は、ここから廻る。
……多分。
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