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This blog is Written by 佐倉透湖,Template by ねんまく,Photo by JOURNEY WITHIN,Powered by 忍者ブログ.
突発やプレイ日記を書き逃げする雑記帳。 未完結品多し。 ネタバレ満載警報発令中~。
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微妙に女性向けかも知れませんね~。
上のイオン様モノ、前編?




「これで、今日の書類整理は終わりだよね」
「はい。お疲れ様でした、イオン様」

 上のイオンがペンを放りだしてうーんと大きく伸びをするのと同時に、書類の無くなった卓上にティーカップが差し出された。
 そのまま処理済みの書類をまとめ始めた導師守護役をちらりと見上げ、湯気の立つココアを口にする。
「アリエッタとのお約束は三時でしょう? 随分と早く済まされましたね」
「ま、ね。ちょっと行きたいところがあったからさ」
 カップを抱えたまま、意味ありげにクスリと笑う。
 彼は飲みかけのカップを置くと、足早に戸口へ向かった。
 扉へ手を掛け、思い出したように振り返る。
「ああ、その書類適当に片づけといてね。三時にはここでアリエッタとお茶会するんだから」
「承知しております」
 守護役の返答に、彼はさも当然といった表情で一つ頷き返すと扉の向こうへ消えていった。




 シンクが高熱を出して寝込んだらしいという話は今朝方聞いた。
 やかましく駆け込んで来た末弟の話を要約すると、シンクがロニール雪山の調査任務に就いた折りに、貴重な採取品を抱えたまま崖から落ちた部下を庇って一緒に崖下へ転落したらしい。
 部下と共に自力で帰還を果たしたものの、二人揃って高熱を出して倒れたのだということだった。

(大方、その使えない部下に感染されたんだろうけど。いつも虚弱だの体力無いだの馬鹿にするアイツを嗤ってやる良い機会だよね)
 そんな事を考えながら、足取り軽く神託の盾本部の階段を降りていく。
 突然の上の導師の訪問に本部中が騒然とする中、当の導師本人はいたく機嫌良く王者の威厳が滲み出た微笑を振りまきながら、目的の最深部、幹部居住区域へ入っていった。



 幹部連の執務室が並ぶ廊下で、まず目に入ったのは自分と同じ顔立ちの少年。
「あれ? うえちゃんもシンクのおみまいに来たの?」
 ふらふらと振り返ったフローリアンの手には、小振りの土鍋が乗った御盆が握られていた。
 決して安定が悪い置き方をしているわけでもないのに、グラグラグラグラ揺れている。
「お前と一緒にしないでよね。っていうかさ、お前講義の時間じゃなかったっけ?」
 腕を組み、見下したような視線を末弟へと向ける。

 生まれた時から導師の座を約束されていたイオンにとって、何のしがらみも持たない末弟は色々な意味合いで腹立たしい存在だった。
 立場、責任、考え方。その他諸々。
 特に、自分に最も素っ気ないシンクにべたべた付きまとってるのが一番ムカツク。
 最後の思いだけは、本人自覚無いのかも知れないが。

「え~~っとぉ……。あ、あはは…………」
 上手い言い訳も思い付かず愛想笑いを浮かべるフローリアン。
「さっきさ、モースが探してたよ。さっさと戻らないと、モースとトリトハイムの説教乱舞を喰らう羽目になるかもね」
「や、やだぁ! それはイヤ!!」
 とんでもないという風に、必死に嫌々する末弟。
 イオンはフローリアンの元へ近づくと、カチャカチャと音を立てる盆を取り上げ猫なで声で耳打ちした。
「今すぐに戻るなら、後で二人に取りなしてやらない事もないけど?」
「うんっ、うえちゃんありがとう! でもイオンもアニスもお出かけしてるから、シンクにご飯上げる人が居ないよぉ」
「僕がついでにやっておくよ。それより……グズグズしてたら見つかっちゃうよ?」
「はうぅ……。お願いね、うえちゃんっ」
 “モースとトリトハイムの説教乱舞”とやらに恐れを抱いたフローリアンは、文字通り逃げるようにその場を後にした。



 フローリアンの背中が扉の向こうへ消えるのを見届けると、イオンはにんまりと笑みを浮かべた。
「さぁて、邪魔者も片づいた事だし。シンクで遊ぼうっと」
 仮にも弟を指して、“と”ではなく“で”。
 三男と競うように寝込む自分をいつもベッドの上から見下ろす次男を、今日は自分が見下ろしてやろう。
 彼は、今朝方の報告を聞いてから今まで、ずっとそう考えていた。
(シンクの悔しがる顔が目に浮かぶよ。人が具合悪く寝込んでる時に小言ばっかり言ってくれるんだから。今日は絶対お返ししてやろうっと)
 見舞いにはあまりにも不穏当な事を考えながら、イオンはシンクの部屋の扉をノックした。








次回へ続く。
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