突発やプレイ日記を書き逃げする雑記帳。
未完結品多し。
ネタバレ満載警報発令中~。
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『白い欠片が降る夜に』scene.2 緑の英雄
の没原稿です。
違う部分は、ギルが空を飛ぶ箇所だけですが……。
砦と月の配置を思いっきりしくじっていたという;
でも、こっちの動きの方が好みで、未だに棄てられない原稿なのです。
scene.2
緑の英雄
細い明かりに色のない刀身が煌めいた。
慈悲深いはずのかの騎士は、その時既に正気を失っていた。
世界を歪ませ、自らの存在をも歪ませた……優しく、愚かな騎士。
正気ならば、気付かぬはずがなかった彼の気配。
背後から忍びより、たった一度。
たった一度。
冷たい月明かりの中、横たわる騎士に白い欠片が降り積もる。
紅く染まった氷の剣を握りしめ、白い世界にただひとり佇んでいた。
短く逆立てた緑の髪。深い森の瞳。背には光撒く薄羽。
かの妖精の名は、ギルといった。
チャリン。シャリン。
ヘレンシア砦。
月明かりに照らされた、北側の広場に高く澄んだ音が響く。
剣を振る度に、氷の刃が唄を唄う。
真円の月光を透かす透明な刀身が、夜闇に煌めく軌跡を描く。
気が済むまで剣を振り続け、気が紛れた頃合いに一度ボクの指定席――広場の端に転がる瓦礫の片隅に腰を下ろした。
氷の剣を消し、瓦礫にもたれて月を見上げる。
「満月か……」
今日という日に満月とは、なんという運命の皮肉だろうか。
「あ、あの。ギル様、コレどうぞっ」
舞い上がった声音と共に、ボクの目の前にタオルが突き出された。
声の主は、キラキラと瞳を輝かせている少年ダークエルフ。確か、フランツといったか。
「ありがとう」
複雑な内心を押し隠し、軽く笑んでタオルを受け取る。
ボクに憧れていると自称する少年は、紅潮した顔一杯に満面の笑みを浮かべた。
「ガンバッて下さいね。フランツは応援してますっ」
「お互いにね」
「ハイッ!!」
フランツは直角もかくやという程に勢いよく頭を下げると、砦の中へと駆けていった。
月の光に満たされた広場に、静寂が訪れる。
微かな虫の歌声。夜風に囁く葉擦れの旋律。
受け取ったタオルを握りしめ、再び月を振り仰ぐ。
……ガウェイン。
今頃、キミはどうしている?
あの少年に。ジャック・ラッセルに会って、キミは何を感じている?
運命の皮肉。
自責の念。
行き場のない怒り。
ボクはね、ガウェイン。
ボクは後悔はしていないんだ。
ただ、無性に心が痛かった。痛かったんだ……。
月に向かって目を閉じる。瞼を通して柔らかな光が染み込んでくる。
消えない痛みが、光の中に浮かび上がる――――
――あの日も満月だった。
洞窟のあちこちに巧妙に設置された水晶窓から差し込む月明かりの中。
青白く眠る世界。
白く凍る、ボクの吐息。
紅く凍り付いた刀身。
ボクの足下に横たわるキミ。
洞窟内に降りしきる、煌めく欠片。
キミの上に降り積もる。
紅い溜まりに降り積もる。
仰向けに横たわるキミの下に花咲いた、紅い溜まりに……。
もはや吐息が凍ることもない。
その双眸が何を映すこともない。
世界の柱を叩き折った重罪人、『龍殺し』ケアン・ラッセル。
白い欠片が降り積もる。
キミという存在を消すが如く。
全て、白く染めてしまえ。消してしまえ。
キミの存在も、ボクの心の痛みも……何もかも。
あの後。
ガウェイン、キミは洞窟の入り口で待っていた。
ボクの姿を認めると、入れ違いに洞窟へと入っていった。
それから程なくニンゲンの街を飛び出し、花の都へも寄りつかず、放浪を続けたキミ。
あの、ケアンの息子に。キミは何を想う? 何を望む?
ボクは……彼と剣を交えてみたい。
可能ならば、彼と行動を共にしたい。
ケアンの替わりではなく。罪滅ぼしでもなく。
ケアンの面影に、小さな針が時折胸に刺さるけれど。
彼、ジャック自身の資質に惹かれる。惹き付けられる。
パーセク様と話すジャックを見ているうちに、なんとなく……そう感じたんだ。
ガウェイン。キミはどうだろうか。
ザイン様を、ボクを、ライトエルフを恨んでいるのだろうか。
ジャックというニンゲンに、何も感じるものはないだろうか。
目を開ける。
冴え冴えと、全てを暴くかの如くに照らし出す真円の月明かりに向かい、そっと手を伸ばす。
月に誘われるままに腰を上げ、そのままふわりと浮き上がった。
月を仰いだままで上へ。
見上げたままの姿勢につられて段々と斜め後ろへ流れていく。
周囲の岩場よりも上空へ上ったところで一回転。
羽根が、ボクの動きに会わせて光の粉を撒き散らす。
幾年もの年月を経て風化し始めた城壁の、尖端へと足音もなく着地する。
視線を月から西へ。遙か西、セディチ地方へ。
ここから見えるはずはないけれど、視線を懲らす。
キミと、少年少女が集う……運命の場所。
キミは、何を感じただろうか。
キミに会ったら、訊いてみようか。
今はただ、キミのために詩を詠おう。
握りしめたままだったタオルが、風に誘われ空を舞った。
ボクの替わりに西へ。
ボクの心を乗せて――――
の没原稿です。
違う部分は、ギルが空を飛ぶ箇所だけですが……。
砦と月の配置を思いっきりしくじっていたという;
でも、こっちの動きの方が好みで、未だに棄てられない原稿なのです。
scene.2
緑の英雄
細い明かりに色のない刀身が煌めいた。
慈悲深いはずのかの騎士は、その時既に正気を失っていた。
世界を歪ませ、自らの存在をも歪ませた……優しく、愚かな騎士。
正気ならば、気付かぬはずがなかった彼の気配。
背後から忍びより、たった一度。
たった一度。
冷たい月明かりの中、横たわる騎士に白い欠片が降り積もる。
紅く染まった氷の剣を握りしめ、白い世界にただひとり佇んでいた。
短く逆立てた緑の髪。深い森の瞳。背には光撒く薄羽。
かの妖精の名は、ギルといった。
チャリン。シャリン。
ヘレンシア砦。
月明かりに照らされた、北側の広場に高く澄んだ音が響く。
剣を振る度に、氷の刃が唄を唄う。
真円の月光を透かす透明な刀身が、夜闇に煌めく軌跡を描く。
気が済むまで剣を振り続け、気が紛れた頃合いに一度ボクの指定席――広場の端に転がる瓦礫の片隅に腰を下ろした。
氷の剣を消し、瓦礫にもたれて月を見上げる。
「満月か……」
今日という日に満月とは、なんという運命の皮肉だろうか。
「あ、あの。ギル様、コレどうぞっ」
舞い上がった声音と共に、ボクの目の前にタオルが突き出された。
声の主は、キラキラと瞳を輝かせている少年ダークエルフ。確か、フランツといったか。
「ありがとう」
複雑な内心を押し隠し、軽く笑んでタオルを受け取る。
ボクに憧れていると自称する少年は、紅潮した顔一杯に満面の笑みを浮かべた。
「ガンバッて下さいね。フランツは応援してますっ」
「お互いにね」
「ハイッ!!」
フランツは直角もかくやという程に勢いよく頭を下げると、砦の中へと駆けていった。
月の光に満たされた広場に、静寂が訪れる。
微かな虫の歌声。夜風に囁く葉擦れの旋律。
受け取ったタオルを握りしめ、再び月を振り仰ぐ。
……ガウェイン。
今頃、キミはどうしている?
あの少年に。ジャック・ラッセルに会って、キミは何を感じている?
運命の皮肉。
自責の念。
行き場のない怒り。
ボクはね、ガウェイン。
ボクは後悔はしていないんだ。
ただ、無性に心が痛かった。痛かったんだ……。
月に向かって目を閉じる。瞼を通して柔らかな光が染み込んでくる。
消えない痛みが、光の中に浮かび上がる――――
――あの日も満月だった。
洞窟のあちこちに巧妙に設置された水晶窓から差し込む月明かりの中。
青白く眠る世界。
白く凍る、ボクの吐息。
紅く凍り付いた刀身。
ボクの足下に横たわるキミ。
洞窟内に降りしきる、煌めく欠片。
キミの上に降り積もる。
紅い溜まりに降り積もる。
仰向けに横たわるキミの下に花咲いた、紅い溜まりに……。
もはや吐息が凍ることもない。
その双眸が何を映すこともない。
世界の柱を叩き折った重罪人、『龍殺し』ケアン・ラッセル。
白い欠片が降り積もる。
キミという存在を消すが如く。
全て、白く染めてしまえ。消してしまえ。
キミの存在も、ボクの心の痛みも……何もかも。
あの後。
ガウェイン、キミは洞窟の入り口で待っていた。
ボクの姿を認めると、入れ違いに洞窟へと入っていった。
それから程なくニンゲンの街を飛び出し、花の都へも寄りつかず、放浪を続けたキミ。
あの、ケアンの息子に。キミは何を想う? 何を望む?
ボクは……彼と剣を交えてみたい。
可能ならば、彼と行動を共にしたい。
ケアンの替わりではなく。罪滅ぼしでもなく。
ケアンの面影に、小さな針が時折胸に刺さるけれど。
彼、ジャック自身の資質に惹かれる。惹き付けられる。
パーセク様と話すジャックを見ているうちに、なんとなく……そう感じたんだ。
ガウェイン。キミはどうだろうか。
ザイン様を、ボクを、ライトエルフを恨んでいるのだろうか。
ジャックというニンゲンに、何も感じるものはないだろうか。
目を開ける。
冴え冴えと、全てを暴くかの如くに照らし出す真円の月明かりに向かい、そっと手を伸ばす。
月に誘われるままに腰を上げ、そのままふわりと浮き上がった。
月を仰いだままで上へ。
見上げたままの姿勢につられて段々と斜め後ろへ流れていく。
周囲の岩場よりも上空へ上ったところで一回転。
羽根が、ボクの動きに会わせて光の粉を撒き散らす。
幾年もの年月を経て風化し始めた城壁の、尖端へと足音もなく着地する。
視線を月から西へ。遙か西、セディチ地方へ。
ここから見えるはずはないけれど、視線を懲らす。
キミと、少年少女が集う……運命の場所。
キミは、何を感じただろうか。
キミに会ったら、訊いてみようか。
今はただ、キミのために詩を詠おう。
握りしめたままだったタオルが、風に誘われ空を舞った。
ボクの替わりに西へ。
ボクの心を乗せて――――
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